同じ業種の友人たちと公開講座のセミナーを開いていた。その中に一人の青年がいた。そして依頼の内容の概略はこうであった。「100年住める住宅が欲しい」と。その言葉は重い。そして、その敷地のロケーションは見事だった。眼下に町の明かりが拡がる。敷地には段差があった。彼の素朴な性格、真摯な姿勢に答えなくてはならない。
設計は私になった。「建築は上棟時の構造体の時が一番美しい」の言葉がずっと気にはなっていた。段差のある部分はコンクリートの躯体で抑えた。そのまま全てコンクリート造でつくり込むことも考えてたが、和室になる部分の仕上げについては疑問があった。最終的には、リビングダイニングは大スパンになるので、コンクリート壁構造にして、廻りの室は木造で並列した。片屋根の木造部分はハイサイド窓を設け、そこから光をもらうようにした。横切る梁間に光格子と設けそこに照明も仕込み、ハイサイド窓の光をワンクッションおき、結露とメンテナンスの為、格子は取り外せるようにした。他天井も梁を表し合板、ポリカツィンの取り外しで点検用とした。
3部屋繋がる室の木の構造体は表し、垂木もそのまま表し、その上に外張り断熱とした。
コンクリート屋根は、防水と劣化の為、軒を長く伸ばした。コンクリートはアルカリ性、直接雨風は、浸透性の塗料を施しても黒ずむ。それと、雨水排水を室外に設け為だ。コクリート造にて、屋上に立上がりを設けプールにし防水するのが矛盾する。防水の保証期間は十年だ。万が一を考えてれば、室外になる躯体に設けたほいうがいい。
100年住もうとするには、それなりの配慮が必要だ。100年の住まいには、永く耐えられる平面構成が必要だ。
仕上げについては、自ずと材料の質感を表す素材となった。コンクリート打放しはむしろ室内の空間構成にあう。石に似た素材感とある種の緊張感が生まれる。コンクリート打放し信仰派ではないが、打放しは写真では解らない程に無為にやさしい。ただ、スランプを上げてきゃしゃな美しいだけのコンクリート(内輪ではしゃぶコンと呼ぶ)は頂けない。コンクリートの力強さがあったほうがいい。
困ったのは4.5帖の客を迎える茶の間だった。小さな室にはそれに似合う空間が必要だ。思い浮かんたのは、利休居士が設計した待庵だった。床の天井が、壁から塗り回すような設えがある。そんなイメージで、ネパールの和紙を仕入れ、壁から天井まで廻し込むようにRをつけて袋貼りにして貼った。床柱は、竹屋にいって、笹がついた竹を添えた。茶室小間にある柱は元来自然を持ち込む意図をずっと感じていたからだ。これでキッチュな和室の様式からいくらかでも抜け出せるかと。こんな意図で創られた。
打放しをオーナーのお母さんが気に入ってくれたことが何より安堵したことであった。オーナーが誰よりお母さんを大事にしてのは解っていたから。嫁いでいったお姉さん達も完成時にはそのロケーションビューを大変喜んでくれた。これはもう設計の善し悪しよりも道路を拡幅で代替地でここを選んだオーナーの勝利だと思った。
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