小規模の建物であり、現場はみるみる変化して行く。毎日のように電話が入るのでその度現場に行く。漆喰下地の木ズリの打ち付けが終わった。木ずりは乾燥してないといけないので、在庫して納品できるもので巾の狭い60を選んだ.多分通常は巾90だろう。これには訳があった。今は存在しない山形市老舗旅館後藤又兵衛にあった。大々的に改修をする最中、設計の先輩の呼びかけで内輪の見学会があった。その時、既存の漆喰壁の下地で使っていた木ずりは巾が狭いものだった。木ずり間にモルタルがガッチリ入り込み下地の割れ難い状態を作っていた。巾が狭い板程木ズリ間の数が増えモルタルがその隙間にガッチリ食い込む仕組みだ。だた本数が多い分だけ手間が掛かる。旅籠町の歴史を担い、数々の文豪や政治家が宿泊したその旅館はその後解体されることになった。山形の良識が問われた事件だった。勿論保存運動の起きてはいたが。なぜかその解体の状態を設計仲間二人と共に、市役所の最上階から眺めていた。ただ悔しくって。
さて、現場では、巾狭の木ずりは棟梁がそれでいいと言った。ただアスファルトフェルトとラスを敷いてからの塗り壁になるので上手く食い込むかどうかは疑問は残るが。屋根は葺かれ、換気格子も一部張り終え、窓も取り付けられ現場は正月を迎える。仕上げの漆喰は凍害を避け、暖かくなる春先に塗られることになるだろう。
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